短編ソフト ホラー・オカルト

アネコベーテとババチカズイ

  • 著:funyara9(滝川雅晴)
  • 作成日:2007/07/21

本編

 山のふもとに、アネコベーテという強い男がいました。
 アネコベーテは、村のガード族の酋長でした。

 アネコベーテの住み処に、村の男達が集まっておりました。

「アネコベーテ様!」
「われらがアネコベーテ様!」

 アネコベーテは、村の男達に言いました。

「われわれは、もっと大きくなりたい。それには、もっと広い土地と、人が必要だ。 この山を越えた所に、ガーキー族が住んでいる。彼らの土地と人を、手に入れたい」
「アネコベーテ様。ガーキー族には、強い男がたくさんいます。われわれガード族よりも、男どもは五倍はいるかと思いますが」
「一対一なら、どうだ? おれと、向こうの酋長のババチカズイが戦う」
「アネコベーテ様なら、勝てると信じていますが、ババチカズイはどの位強いのか、わかりません」

「お前、ババチカズイを調べてくれ。 どんな奴で、今何をしているのか」
「へい、わかりました」


 ガード族の二人の男は、山を越えていきました。

「あの光は何だ?」
「祭りか?」

『ドン・・・ ドドン・・・』

 二人の男は、おそるおそる、音のする方を見ました。

「おお、祭りだ!」

『ドドン・・・ ドンドン・・・ ドンドドン・・・』
『ドンガラガッタ・・・』

 火の周りを、大勢の人達が踊っておりました。

「おいっ、あれがババチカズイじゃないか?」

 火から少し離れた高台に、ババチカズイがゆったりと座っておりました。
 ババチカズイの周りには、たくさんの食べ物と女がおりました。

「ああ、間違いない。 あの感じじゃあ、酋長だもんな」
「思ったより、背が小せえな」
「ああ」

 二人の男は、振り返ると、来た道を帰って行きました。


 二人の男は、アネコベーテに言いました。

「われらがアネコベーテ様!」
「われらがアネコベーテ様!」

 アネコベーテは、二人の男に言いました。

「どうだ。何かわかったか」

「はい、ババチカズイを見ました。奴は、背が低いです」
「強そうには見えません。奴は、のんびりと祭りを見ていました」
「一対一で戦ったら、間違いなく、アネコベーテ様の勝ちですよ」
「そうそう、間違いない」

「そうか。祭りか」

「ええ、盛り上がってましたね」
「おいらも、つい踊りそうになりましたよ。へへ」

「その祭りは、いつまでやってる?」

「さあ、それは分かりません」
「飛んで帰って来ましたんで」

「お前、祭りがいつまでやってるのか、調べてくれ」

「へい、わかりました」


 ガード族の二人の男は、薄暗くなった山を越えていきました。

『ドン・・・ ドドン・・・』

「ハアッ、ハアッ・・・ まだやってらあ」
「ガーキー族の人間に聞くか」

 二人の男は、祭りの集まりに向かいました。

「あの〜」
「ん?」
「えへへ。このお祭りね、いつまでやってんだい?」
「ああ、あと二日だね」
「あっそう、へへ。あんがとさん」

 二人の男は、振り返ると来た道を帰って行きました。

 その日の夜、二人の男は、アネコベーテに言いました。

「ハアッ、ハアッ・・・ われらがアネコベーテ様!」
「われらがアネコベーテ様!」

 アネコベーテは、二人の男に言いました。

「祭りはいつまで?」
「ハアッ、ハアッ・・・ あと二日、二日やるそうです」

「そうか。よくわかった」


 その日の夜遅く、アネコベーテの住み処に、村の男達が集まっておりました。
 アネコベーテは、村の男達に言いました。

「ガーキー族の所に行くぞ。明後日の朝に発つ。準備せい」

「アネコベーテ様。もしや、ババチカズイと戦うので?」

「そうよ」

 それから二日後、ガード族の男達は、山を越えていきました。

『ドン・・・ ドドン・・・』

 アネコベーテは、ババチカズイに向かっていいました。

「ババチカズイ!」

『ドン・・・』

 祭りが止まりました。

「ババチカズイ、話がある!」


「お前は、アネコベーテか?」
「そうだ」
「何しに来た?」
「お前と勝負がしたい!」
「何故に?」
「ガーキー族の土地と人が欲しい! どうだ、おれとお前が戦って、勝った方が土地と人を得るってのは」
「ふん、虫のいい話だな。ガード族の人間は、何人いる?」
「まあ、五十人てとこだな」
「われわれは、その五倍はいるぞ。つりあわんな」
「ガードはな、土地がいいんだよ。いい作物がいっぱい取れるぜ」
「そうか。お前、相当自信があるようだな」
「あたりまえよ!」
「ハハハ、これは楽しみだな。わかった。受けてみようじゃないか。太陽が沈んだ頃、ここでやるぞ。それまで、ここで食って、祭りでも見ておれ」

 アネコベーテと男達の前に、たくさんの食べ物が並べられました。

「アネコベーテ様、お食べになられないんですか?」
「ああ。毒でも入れられたら、なんだからな」
「アネコベーテ様、ババチカズイ様がお呼びのようですよ」

 アネコベーテは、ババチカズイのいる高台に向かいました。

「何の用だ」
「アネコベーテ。まあ、一杯飲め」

 ババチカズイは、アネコベーテに杯を出しました。

「いらないね」

 ババチカズイは、酒を自分の杯に入れて飲みほしました。

「ハハハ、毒でも入っているかと思ったのか。この通り、おれも飲んだぞ。さあ」

 ババチカズイは、酒をアネコベーテの杯に入れました。

「なら、まあ」

 アネコベーテは、酒を飲みほしました。


 夕暮れの頃、アネコベーテは、自分の足をさすっておりました。

「なんだ、このしびれは? おい、お前はしびれがあるか?」
「へえ、しびれはありませんが、何かこう、手に力が入りません」
「奴め! 何か入れやがったな。あの杯に、何か塗ったな」

 アネコベーテは、ババチカズイのいる高台に向かいました。

「おい、ババチカズイ! 戦いは延期だ」
「どうした?」
「どうも、体の調子がいけねえや。足のしびれが取れねえ」
「延期はできんね。延期をするなら、ガード族の土地と人はもらうぞ」
「おい、ババチカズイ! てめえ、きたねえぞ! 杯に何か塗ったな! おれの部下も、食事の後は様子が変だぞ!」
「何を証拠に! とにかく、予定は変えん。逃げるなよ」

 太陽が沈んだ頃、アネコベーテとババチカズイは、祭りの広場で向かい合っておりました。

「アネコベーテ! 好きな武器を取れ!」

 アネコベーテは、長い槍を手に取りました。

 ババチカズイは、長い刀を手に取りました。

『ジリ・・・』


 アネコベーテは、ババチカズイに襲いかかりました。

「うぉ!」
『カンッ!』
「ふん!」
『キンッ! カンッ!』
「うぉ! ふっ!」
『カン!』
「ふん!」
『カンッ! キンッ!』

 アネコベーテの足がぐらつきました。

「ふん!」
『カンッ! バリッ!』

 ババチカズイは、刀でアネコベーテの槍を割りました。

「このやろう!」
「ふん!」
「うっ!」

 ババチカズイは、アネコベーテの足のももに、刀で突きました。

「ぐっ!」

 アネコベーテの足から、血が流れました。
 ババチカズイは、アネコベーテの喉元に、刀を突き付けました。

「・・・まいった」

 アネコベーテは、がっくりとうなだれました。

「ハアッ、ハアッ・・・ 約束通り、ガードの土地と人はもらうぞ! お前はそこの、酋長のままでよいぞ」

 ガード族の男達が駆け寄りました。

「アネコベーテ様!」
「アネコベーテ様!」

 アネコベーテは、男達にかかえられました。

「帰るぞ」

 アネコベーテは男達にかかえられたまま、夜道に消えていきました。


 幾日かたった頃、アネコベーテは目を覚ましました。

「あーっ」

 アネコベーテは、杖を持って外に出ました。

 道を歩く男に言いました。

「おいっ、何か飲み物と食べ物をくれ」
「・・・」

 男は、何も言わずに通り過ぎて行きました。

「おいっ!」

 道を歩く女に言いました。

「おいっ、何か飲み物と食べ物をくれ」
「・・・」

 女は、何も言わずに通り過ぎて行きました。

「おいっ! おいっ!」

 アネコベーテは、女の後を付けて歩きました。

 女は家に入りました。

 アネコベーテは、女の家に入りました。

「おいっ、飲み物と食べ物をくれ」
「・・・」

 女と中の家族は、何も言いませんでした。

「なぜ黙っている! 殺されたいのか!」

 アネコベーテは、家の中の水と食べ物を取って食べました。

「・・・」

 女と中の家族は、何も言いませんでした。

「何か言え!」

 アネコベーテは、女と家族に向かって、野菜を投げつけました。

『バサッ・・・』
「・・・」

 女と中の家族は、何も言いませんでした。

「このやろう・・・」


 アネコベーテは女の家を出ました。

 道を歩く男に言いました。

「おいっ、お前」
「・・・」

 男は、何も言わずに通り過ぎて行きました。

「おいっ、お前に言ってんだよ!」

 アネコベーテは、男の胸ぐらをつかみました。

「おいっ、何故、何も言わん!」
「ひっ・・・」
「殺すぞ!」
「ああっ・・・ 許してください・・・」
「何故だと聞いておる!」
「あっ・・・あなたと話したり、関わったりすると、家族を皆殺しにすると、バ・・・ババチカズイ様からの、おたっしがあったんです」
「何?」

 アネコベーテは、男の胸ぐらを放しました。

「ん?」

 振り返ると、ガーキー族の兵と、ババチカズイの息子が、武器を持って立っておりました。

 ババチカズイの息子は、アネコベーテに言いました。

「今日からおれが、ここの酋長だ」


 次の日、男とアネコベーテは、道の木に、紐ではりつけられておりました。

「おいっ、ババチカズイを呼べ!」

「・・・」

 道行く人は、何も言わずに通り過ぎていきました。

 隣で、はりつけられている男がいいました。

「ううっ・・・ おらはもうだめだ・・・ ううっ」
「お前はおれと、話しただけじゃないか」
「ううっ・・・ 家族が一人、殺されました・・・ ううっ」
「なんと! ババチカズイめ・・・ 殺してやる!」

 道行く人は、じっとアネコベーテを見ると、何も言わずに通り過ぎていきました。

「・・・くそっ」

 アネコベーテは、道行く人を見るのをやめました。


 その夜、アネコベーテと男は、ぐったりとうなだれておりました。

「もし・・・」

「ん?」

 アネコベーテの前に、老人が現れました。

「長老!」
「紐を切ります。逃げて下さい」
「ああ、たのむ!」

 長老は、紐を切りました。

 アネコベーテは、立って言いました。

「長老、すまん!」

 アネコベーテは、隣の男の紐を切りました。

「おい、お前も来い!」

 アネコベーテは、家に戻って武器を取りました。
 武器を男に渡しました。

「ババチカズイを殺しに行くぞ!」

 男は武器を手に取りました。

 アネコベーテは、家から外に出ました。

『ズッ・・・』
「うっ!」

 アネコベーテは、後ろを見ました。
 男は、アネコベーテの背を、刀で突き刺しておりました。

「お前・・・」

「ひっ! お、おらの家族の方が、大事だ!・・・」
「よくも!」

 アネコベーテは、刀で男に切り付けました。

『ビシュッ』
「ううっ!」

 男は血をふき出して、ばったりと倒れました。

 アネコベーテは、口から血を流しながら、歩きました。

「ババチカズイ・・・ ババチカズイ・・・」

 やがて、アネコベーテはばったりと倒れました。


 次の日、ガーキー族の道に、アネコベーテの生首がさらされておりました。
 生首は、どす黒くよごれ、ざんばら髪の姿をしておりました。

「うわっ、怖い・・・」

 道行く人は、アネコベーテの生首を見ると、避けるように通り過ぎて行きました。

 ババチカズイは、高台からアネコベーテの生首を見ておりました。

「ふん! 見苦しい」


 次の日の朝、ガーキー族の兵が道を歩いておりました。

「ああっ! おいっ、生首がないぞ!」
「うわっ、ほんとだ」

 アネコベーテの生首が消えておりました。

「探せ!」

 大勢の兵が集まり、辺りを探し出しました。

「何事だ!」

 ババチカズイは、高台から言いました。

「うわっ!」
「ひっ!」

 大勢の兵が、退いていきました。

 ババチカズイの顔は、どす黒くよごれ、ざんばら髪の姿をしておりました。

 しばらくすると、ババチカズイの息子が、高台に上がってきました。

「どうした?」
「この化け物!」
「おい、何をする!」

『ビシュッ』

 息子は、ババチカズイの首を切り落としました。

「ハッ!」

 息子は、ババチカズイの首に水をかけました。

「ああ、お父上! お父上! ううっ・・・」

 息子は、ふるえる手でババチカズイの首を抱きかかえると、泣き叫びました。


 森の木の影に、長老がおりました。

 長老は、泣き叫ぶババチカズイの息子を見ておりました。

 手に、アネコベーテの生首を持っておりました。

「・・・」

 長老は、振り返ると、森の奥に消えて行きました。

≪完≫

[ 戻る ]

感想等の書き込みをお待ちしております。
下記の掲示板で自由に書き込みが出来ます。





トップ 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS


姉妹サイト:
検索エンジン・ポータルサイトのリンク集 夢事典・夢診断Wikidream PS3体験版情報 名作シネマ☆セリフ
格安ファーストフード情報 お勧めJ-POP☆邦楽
気になるIT用語辞典 気になる経理用語辞典 気になる現在・時事用語
Last-modified: 2008-02-01 (金) 10:26:54 (4162d)

WEB・携帯(モバイル)サイト開発とSEO対策の和道株式会社