短編ソフト ホラー・オカルト

将軍ヘテの最後

  • 著:funyara9(滝川雅晴)
  • 作成日:2007/06/23

本編

 むかし、ハンの国にヘテという名の将軍がおりました。ヘテ将軍は、馬に乗って鹿狩りをしておりました。

「どうっ! どうっ!」
『ドドッ ドドッ ドドッ』

 目の前に、一頭の鹿が走っておりました。
 ヘテ将軍は、弓矢をひいて放ちました。

『ビュン!』
「ちっ!」

 矢は、わずかにはずれました。

 鹿は、森の中に逃げ込みました。
「待てー!」
 ヘテ将軍は、馬を引いて森の中に入っていきました。

『ドドッ ドドッ』

 けもの道の先に、鹿が三頭いるのが見えました。
 鹿は、一斉に逃げだしました。

「フハハ! 覚悟しろー!」

 ヘテ将軍は、馬を引いて鹿を追いかけました。

『ドドッ ドドッ』


 しばらくして、ヘテ将軍は馬を止めました。

「フー、フー・・・ 鹿の奴、どこに行きたがった! フー、疲れた」

 大きなため息をつくと、とぼとぼと馬を走らせました。

 やがて、日が暮れてきました。

 ヘテ将軍は、森の中をさまよっておりました。あたりは霧(きり)におおわれておりました。

「なぜ出れんのだ!」

 ヘテ将軍は、馬をたたいてゆさぶりました。

「おい、お前は出口がわからんのか?」

 馬は、何も返事をしませんでした。

 森の中から、梟(ふくろう)の鳴き声が聞こえてきました。

『ウォー ウォー』


 霧がだんだんと深くなり、周りが見えなくなってきました。

 少し先に、ぼうっとした光が見えました。

「なんだ?」

 ヘテ将軍は、光のほうに向かって行きました。

 一軒の民家が見えました。

「おっ! だれか住んでるようだな」

 ヘテ将軍は、馬を下りて民家の戸をたたきました。

『コン コン』
『ギィ・・・』

 戸が開いて、老婆が出てきました。

「はい、どなた?」
「わしは将軍ヘテだ。森に迷ってしまった。一晩泊まらせてくれるか?」
「ああ、有名なヘテ様ですか。ええ、わかりました。汚い所ですが、どうぞ」


 将軍ヘテは、料理を食べておりました。

「うむ、うまい。この肉は、なかなかいけるな。これは何の肉かね?」
「猪の肉です」
「そうか。一人で住んでるのかね?」
「ええ」
「よく食べていけるもんだな」
「亡くなった夫が、獣を狩るための落とし穴を、たくさん作ってくれたんです。わたしはその落とし穴から、獣を取って食べています」
「なるほどねえ。ところで、この森から出る方法は?」
「この先のけもの道を、沿って行くと出られます」
「ほう」
「ヘテ様は、どうしてこの森に来たんです?」
「ああ、わしは鹿狩りが好きでな。鹿を追っていたのよ。それでこの森に来たわけさ」
「ああ、それで・・・ この辺りは、鹿が多いですからねえ」


 将軍ヘテは、いつの間にか、ぐっすりと寝ておりました。
 小便がしたくなり、目を覚ましました。

「ん?」

 手が紐でしばられておりました。

「なんだこれは? おいっ! ばあや!」

 後ろから、老婆がぬっと出てきました。

「うわっ・・・」

 老婆は、手に肉切り包丁を持っていました。老婆は将軍ヘテをにらみつけて言いました。

「外へ出な!」
「わ、わかった・・・」

 老婆と将軍ヘテは、外に出ました。

「そこ、左」

 二人は、うっそうとした森の中を歩いていきました。


『ズドッ!』
「うわっ!」

 将軍ヘテは、落とし穴に落ちました。

「おいっ、何をする!」

 老婆は、じっとにらみつけると、何も言わずに去っていきました。

 次の日、老婆が現れました。
 老婆は、手になべを持っていました。

「な、なんだそれは!」

 老婆は、なべの湯を将軍ヘテにふりかけました。

『ジャパッ!』
「ぎゃー! ぎゃー!」

 将軍ヘテは、うずくまり、もだえ苦しみました。
 老婆は、じっとにらみつけると、何も言わずに去っていきました。


 次の日、老婆が現れました。
 老婆は、手に三つの髑髏(どくろ)を持っていました。
 老婆は、髑髏をなでながら言いました。

「かわいい息子たち・・・ ごらん、あれが将軍ヘテだよ。お前たちを殺した、将軍ヘテだよ」
「・・・」

 将軍ヘテは、老婆をにらんで言いました。

「おい、わしが何をしたというんじゃ!」
「あんたの戦(いくさ)のおかげで、この子達が死んだんじゃ!」
「ここはハンの国だぞ! 味方が殺すわけは無い!」
「国の命令で、この子達が兵士として、かり出されたんじゃないか!あんたがいたからじゃ!あんたは英雄と言われるが、ただの人殺しじゃ!」
「死人の出ない戦など、ないわ!」

 老婆は、じっとにらみつけると、何も言わずに去っていきました。


 次の日、老婆が現れました。
 老婆は、手に槍(やり)を持っていました。

「おい、ま、待て!早まるな! なあ、ここを出してくれたら、何でも褒美を取らせるぞ! 何がほしい?」
「あんたの首じゃ!」

『グサ!』
「ぎゃー!・・・」

 老婆は、槍を将軍ヘテに突き刺しました。将軍ヘテは、老婆を見つめながら、やがてぴくりとも動かなくなりました。


 老婆は、家の中で、将軍ヘテの首を前にして座っておりました。ひざもとに、三つの髑髏を持っていました。

「かわいい息子たち・・・ これで、お前たちの所に行けるよ」

 老婆は、火をつけると、家の中に投げ込みました。

『ボウッ』

 火は、勢いよく家の中に燃え広がりました。

『ボオオ・・・』

 老婆は火の中で、将軍ヘテの首を見つめながら、三つの髑髏をなで続けました。

 やがて、火は家をすっぽりとつつみ、ごうごうと煙を出して燃え上がりました。

≪完≫

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Last-modified: 2008-02-01 (金) 10:37:39 (4246d)

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