短編童話

タバコをすう老人

  • 著:funyara9(滝川雅晴)
  • 作成日:2007/06/10
    • 魔法のiらんど 童話/絵本 2007/06/17付 注目作品

本編

 ある町中の一軒家で、お葬式がありました。
 家には、亡くなった人をしのぶ友人達が、たくさん来ておりました。

 日がどっぷりと暮れ、通夜がはじまりました。
 棺おけの前の机には、はでやかな食べ物や飲み物が、たくさん並べられておりました。
 友人達は、食べ物や飲み物を口にしながら、話したり笑ったりしておりました。

 その中に、一人の老人がおりました。老人は、一人だまって、もくもくと酒を飲み、ときおり食べ物を食べておりました。
 亡くなった人の息子は、老人に近づいて言いました。

「あのう、ずいぶんとお顔が赤くなってらっしゃいますね。大丈夫ですか?」
「はっ?ああ、こりゃどうも。わしは全然、大丈夫ですわ。ハハハ。ご心配どうも」

「そうですか。もし疲れましたら、ここに枕がありますから、どうぞ横になって楽になさって下さいね」
「ああ、いやあ、気がきくねえ〜、ハハハ。どうも、どうもありがとう」
「今日は、遠くから来て頂いて、ありがとうございます。亡くなった父も、さぞかし喜んでいると思います。さあ、どうぞ」
 息子は、老人に酒をつぎました。


「ははっ、こりゃあ、どうも。ありがたい。頂きます。 どれ、あんたも飲まんかね?」
「あいにく、私は酒が飲めないものでして。お気持ちだけ、ありがたくお受け致します。では、心ゆくまで飲んで下さいね」
 そう言うと、息子は礼をして、他の客の所に行きました。
「ちぇっ。酒が飲めねえんかい。つまらん男だねえ」
 老人はそう独り言を言うと、また一人でもくもくと、酒を飲み続けました。

 老人の顔は、ますます赤くなりました。まぶたがどろんとたれ下がり、うつろな目で、ぼんやりとしておりました。

 老人は、ブルブルとふるえる指で、タバコを取り出しました。マッチの火でタバコに火をつけると、うまそうにタバコを吸いはじめました。

 しばらくすると、老人のまわりは、タバコの煙だらけになりました。タバコの煙は、部屋中に広がっていきました。


 部屋の中の人達は、老人をにらみました。
 ですが、老人はタバコを吸うのをやめませんでした。

 ついに、しびれを切らした女の人が立ち上がって、老人に向かって言いました。
「ちょっと、いい加減にしてくれませんか!亡くなった彼が、タバコを嫌ってた事はご存じでしょう?」
「やつはわしに負けたんだ」
「えっ?」

 老人は、すくっと立ち上がると、大声で話を始めました。

「やつはな、いつもタバコをすうわしを見下して、こう言いやがった。『そんなにタバコばっかりすっていると、早死にしますよ。あなたのはらわたは、タバコのヤニで真っ黒ですよ』ってな! それがなんだい!わしより先に、くたばっちまったじゃないか!おれより十歳も若いくせにな。わしを見てみい。この通り、ピンピンしてらい!カッカッカッ!」
 まわりの者は、あぜんとして老人を見ておりました。

 老人は、棺おけに向かって、よろめきながら歩き出しました。
「おじいさん、大丈夫ですか?」
 亡くなった人の息子が、老人に近寄って、背中に手をやりました。

 すると、老人は体をふるわせて、がっくりと棺おけの前にうずくまりました。

 老人は、涙をはらはらと流しながら、棺おけに向かって言いました。
「おまえには息子がいるが、わしの息子は癌で死におった。 おまえには、葬式をしてくれる家族がいるが、わしが死んだら葬式をしてくれる者は、だれもおらん。ウッウッウッ… わしは、タバコをやめられんかった代わりに、息子を無くしてしもうた。こんな立派な葬式をしてもらって。おまえがうらやましい… ウッウッウッ…」

 亡くなった人の息子は、老人の背中に手をやると、やさしくさすって抱きしめました。

≪完≫

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Last-modified: 2008-02-01 (金) 09:36:32 (4979d)

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