短編童話

金持ちのポーテントール

  • 著:funyara9(滝川雅晴)
  • 作成日:2007/06/17
    • 魔法のiらんど 童話/絵本 2007/06/24付 注目作品

本編

 昔、ロックウェルという町がありました。
 ある夜、料理屋に町の店の主人達が集まり、食事をしておりました。

「景気はどうだい?」
「さっぱりだね」
「今月は家賃も払えねえよ」
「うちはね、昨日は雨が降ったろう?その日だけは、傘がとても売れたわよ」
「うちの風邪薬も、昨日だけは飛ぶように売れたね」
「うちのパンはとんとんだね。毎日が同じような売れ行きさ」
「うちの酒はいつでも売れるよ。ガハハ、世の中につらいことがある限り、酒は永遠に売れるのさ」
「うちの仕立て屋は、てんでだめだね。結婚式とか、最近ないからね」
「うちの野菜もだめだね。天気が悪いので、値段を上げたら、さっぱりさ」
「うちの魚もだめだね。売れ残りが多くて、腐っちまうんだよな」
「その腐った魚をちょうだいよ。うちの家畜の餌にしたいね」
「ただじゃあいやだよ。ちょっとはお金を出してくんなきゃ」
「じゃあ、ぶどう酒1本ということでどうだい?」
「ちょっと、あれ」


 料理屋に、町一番の金持ちのポーテントールが入ってきました。
 ポーテントールは、店の主人達に言いました。

「傘屋、仕立て屋に肉屋のご主人。先月の家賃はまだかね?」
「ポーテントールさま、もう少し、お時間を頂けませんでしょうか。今月の末には必ず・・・」
「うちも今月の末には、払いに伺いますよ」
「うちもそうしますよ、えへへ」

 ポーテントールは、ぎょろりとした目で言いました。
「今月の末だぞ!払えなかったら、とっとと出ていってもらうからね」

 ポーテントールは、椅子に座ると料理を注文しました。
「いつもの料理ね。つけといて」

 しばらくすると、ポーテントールの食卓に、豪華な料理がどんどんと運ばれました。

 店の主人達は、まんじりと見ておりました。

「さすがは、町一番の金持ちだね」
「見て!あのお腹のでっぱりよう」
「それが、金持ちの証拠さ」
「おれも、ああなりたいもんだな」


 酒屋の主人は、酒を持ってポーテントールに近づきました。

「ポーテントールさん、えへへ」
「これは酒屋の主人。なんだね?」
「まあ、この酒でもいかがですか?」
「ほう、これはどうも。じゃあ1杯」

 ポーテントールは、ぐいぐいと飲み干して、真っ赤な顔になりました。

「いやあ、うまいうまい。これは、君の店の酒かね?」
「そうですよ。ごひいきに。えへへ」
「わかったわかった。今度、まとめて買いに行くからな」
「ところでポーテントールさん。あなたみたいに金持ちになるには、どうしたらなれるんですか?」
「・・・それは言えないね」
「じゃあ、ヒントだけでも」
「そうだな。じゃあ、ひとつだけ。君は、お金を得るためには、何をする?」
「酒をたくさん売りますね」
「そうだろう。私は土地を貸して金を得る。金を貸して金を得る。この違いが分かるかね?」
「はあ、お金の元手がたくさんあって、いいですね」
「最初は私も、小さい儲けだったよ。だけど、金は金を生むんだよ。私はそうやって、金を増やしてきたんだ」
「なるほど、そいつは素晴らしいですね!」


 酒屋の主人は、店の主人達の食卓に戻りました。
「何を話してたんだい?」

 酒屋の主人は、皆に話しました。

「へえ、そうなんだ。ポーテントールさんも、最初は小さかったんだね」
「まあ、おれたちには真似できないよ」
「まずは家賃のために働かないと」
「じゃあ、おれは帰るよ」
「じゃ、おれも」
「さよなら」
「おやすみ」


 次の日、野菜屋の主人が安売りをはじめました。

「いらっしゃい、いらっしゃい、大安売りだよ!」
「こんなに安いのは、初めてねえ」
「まとめ買いをしとかないと」

 野菜屋の商品は、一つ残らず売り切れました。

 その次の日、野菜屋は店を閉じていました。
 店の主人達は、首をかしげて見ておりました。

「はて、野菜屋はどうしたのかね」
「店をやめてしまうのかね」

 その次の日、野菜屋は食器屋になっておりました。
 店の主人達は、おどろいて食器屋に入りました。

「あのう、野菜屋の主人はどうしたんです?」
「ああ、野菜屋の主人は、私に店を貸したんですよ。今日からここの店長です。よろしく」

 店の主人達は、集まって話しました。

「おい、見たか」
「ああ、野菜屋の主人のやつ、土地を貸して金を得てるんだな」
「うまいことやりやがって!」
「どれ、家を見に行くか」

 店の主人達は、野菜屋の主人の民家に行きました。

「おお!」
「入り口に張り紙があるぞ。"お金貸します 利子は◇◎ 連絡は○△×"」
「ウハハハ!」
「アハハハ!こりゃ、おもしれえ!まるで、ポーテントールさんじゃないか!」
「ウヘヘヘ!」


 次の日、魚屋とパン屋と酒屋と薬屋の主人が、安売りをはじめました。

「いらっしゃい、いらっしゃい、大安売りだよ!」
「こんなに安いのは、初めてねえ」
「まとめ買いをしとかないと」

 魚屋とパン屋と酒屋と薬屋の商品は、一つ残らず売り切れました。

 その次の日、魚屋とパン屋と酒屋と薬屋は、店を閉じていました。

 その次の日、魚屋は時計屋に、パン屋は馬車屋に、酒屋は服貸し屋に、薬屋は宝石屋になっておりました。

 店の主人達は、集まって話しました。

「お前もか」
「お前もか!」
「アハハハ!こりゃ、おもしれえ!みんな、ポーテントールさんになっちまったよ!」
「お前の家の、入り口の張り紙を見たぞ。"お金貸します 利子は◇◎ 連絡は○△×"」
「野菜屋のと同じじゃんか、ヒヒヒ!」
「ウハハハ!」
「ウヘヘヘ!」


 その夜、傘屋と仕立て屋と肉屋の主人が集まっておりました。

「どうだい?今日は今月の末だけど、家賃は払えるかい?」
「うちは無理だねえ」
「うちも」
「うちも」
「私たちは、魚屋とパン屋と酒屋と薬屋と違って、店が自分の土地じゃないからね」
「・・・やれやれ、金を借りても、利子がかかるだろう?」
「そうだ!夜逃げしない?」
「ええ!どこに逃げるんだい?」
「となりのとなりの町だよ。馬車はうちのに乗せてあげるよ」
「ほんとうかい?それじゃあ、そうしようかな」
「そうしよう。それしか道はないね」
「よし、決めた」


 次の日、ポーテントールは、傘屋と仕立て屋と肉屋の店に行きました。

「なんと!この張り紙は・・・」

 張り紙には、『しばらく休みます』と書いてありました。

 ポーテントールは、傘屋と仕立て屋と肉屋の民家に行きました。

「なんと!この張り紙は・・・」

 張り紙には、『しばらく休みます』と書いてありました。

「どうやら、夜逃げしよったな。まあ、仕方がないだろう」

 ポーテントールは、傘屋と仕立て屋と肉屋の店に、張り紙を張りました。
 張り紙には、『お店貸します 家賃は◇◎ 連絡は○△×』と書いてありました。


 次の月、ポーテントールは、傘屋と仕立て屋と肉屋の店に行きました。

「ふーむ。ここはなかなか、借り手がつかないな」

 ふと、周りを見渡すと、お店のすべてに張り紙が張られておりました。
 張り紙には、『お店貸します 家賃は◇◎ 連絡は○△×』と書いてありました。

 ポーテントールは、魚屋とパン屋と酒屋と薬屋の民家に行きました。
 張り紙には、『しばらく休みます』と書いてありました。

「みんな、どこに行ったんだ?」

 ポーテントールは、汗だくになりながら、周りの民家を回りました。

 民家には、だれもいませんでした。

「おーい、だれかー!」

 日が暮れて、ポーテントールは道に座り込みました。

「・・・ああ、何があったんだか・・・」


 ふと、道の向こうから、馬車が来るのが見えました。

「あっ、人だ!」

 ポーテントールは、馬車の人に話しかけました。

「あのう、あなたはロックウェルの町の人ですか?」
「ああ、そうじゃったが。忘れ物を取りに来たんじゃよ」
「みんな、どこに行ってしまったんですか?」
「ある日、食べ物を売る店が、全部なくなってね。高い物を売る店と、土地と金を貸す者ばかりになったんじゃよ。それじゃあ、ここで生きていけないから、みんな夜逃げしちまったよ」
「ああ、なんてことに・・・」

 ポーテントールは、すってんてんになりました。

≪完≫

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Last-modified: 2008-02-01 (金) 09:32:38 (4979d)

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