短編童話

長安への引っ越し

  • 著:funyara9(滝川雅晴)
  • 作成日:2007/06/10

本編

 洛陽の都にひとりの商人がおりました。名を陳といいました。
 ある日、陳は家で休んでおりました。すると、トントンと戸をたたく音がしました。戸を開けると、背の高い人が立っておりました。

「はい、なんでしょう」
「こんにちは。わたくしは、引っ越し屋でございます。この度、隣りの李さんが引っ越しをすることになりまして、ご連絡にまいりました」
「ええっ! 李さんが引っ越しですか」
「ええ、急に決まったそうで」
「それで、どこに引っ越されるのです?」
「長安の都です」
「そうですか。あの大都市にですか。寂しくなりますね。では李さんに、お別れのあいさつしないといけないですな」
「あいにくですが、李さんはすでに長安の都に向かっております。それで、李さんからあなた様への贈り物を預かっております」
 そう言うと、背の高い人は赤い包みを渡しました。
「そうですか。李さんはもう洛陽にいないのですか。一目お会いしたかったですな。よっぽどお急ぎだったんでしょうねえ」

 陳は外に出て、李の家を見に行きました。
 李の家から、立派な家具がどんどん外に運ばれておりました。まばゆい色の屏風(びょうぶ)や坪や、立派な家具がありました。
「さすがは李さんだ。うちとはとにかく、物が違う。引っ越しはまだまだかかりそうですね。どれ、手伝いますよ!」
 陳は、背の高い人と一緒に家具を運びました。

 夕暮れになり、家具はすっかり運び出されました。
 背の高い人は、厚く礼をいうと荷馬車に乗りました。そして、長安の都のほうに向かって出かけていきました。


 次の日の朝、陳は家で休んでおりました。すると、トントンと戸をたたく音がしました。戸を開けると、李が立っておりました。
「おや、李さんうれしいねえ!ハハハ。 もう会えないかと思っていましたよ」

 李は首をかしげて言いました。
「はて、陳さん。わしは旅から戻ってきたら、家の物が全部なくなっているんですよ。陳さん、何か心当りはありませんか?」
「えっ?・・・ あっ、しまった! すると、あれは泥棒だったんだ!」
 陳は、それまでの出来事を李に話しました。
 すると、李は笑って言いました。
「ハッハッハッ。どうりで家具がなくなったわけですな。なあに、そ奴はそのうち長安の都でつかまりますよ」
「はあ、そうですよね。 本当に憎い奴ですなあ。家具が全部戻ってくればいいですね」
 陳は、李がとても落ち着いていたので、不思議に思いました。

 いく日かがたったころ、陳は家で休んでおりました。すると、トントンと戸をたたく音がしました。戸を開けると、李が立っておりました。
「おや、李さん。どうかしましたか」
「いやねえ、陳さん。家具が全部、戻ってきたのですよ」
「ええっ! それはよかったですね!ハハハ。 しかし、まあよく戻ってきましたね!」

 陳は外に出て、李の家を見ました。
 李の家に、立派な家具がどんどん運び込まれておりました。まばゆい色の屏風や坪や、立派な家具がありました。
「長安の都の、家具の商人が来ましてね。なんでも、坪の中の巻き物を読んでくれたそうなんですよ」
 李は、陳に小さな巻き物を渡しました。
 そこには、
『私は、この家具を売るつもりはまったくありません。もし、この巻き物を見つけたならば、これは盗まれた物です。その証拠に、すべての家具の裏に、「洛陽の十七坊 李の物」と小さく記してあります』
と書いてありました。
「いやあ李さん、これはみごとですなあ! さすがの泥棒も、ここまでは気付かなかったんですな。ハハハ」
「売り急ぐ者は、坪の中まで見なかったが、買う方は、じっくりと坪の中まで見てくれますからね」

≪完≫

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Last-modified: 2008-02-01 (金) 09:45:06 (4979d)

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