短編童話

カニと娘

  • 著:funyara9(滝川雅晴)
  • 作成日:2007/06/09
    • 魔法のiらんど 童話/絵本 2007/06/10付 注目作品

本編

 大きな川に、一匹のカニがおりました。名をカニ助といいました。カニ助は、川で娘と遊んでおりました。
「カニ助ちゃん、こっちへおいで」
 カニ助は、娘の手の平に乗りました。そして、くるくると動き回りました。
「きゃ、こそばいわ! アハハ、ほんとにかわいいわねえ」

 娘は、カニ助の手をつまんだり、頭をなでたりして遊びました。カニ助は、娘の美しい手にうっとりとしておりました。

 しばらくすると、娘は立ち上がりました。
「カニ助ちゃん。あたい、そろそろ帰る。また遊ぼうね〜」


 カニ助は、娘を好きになりました。
「ああ、おいらも人間になりたいなあ。そうすれば、あの娘とずっと遊べるのに。。 そうだ!川の底の主に聞いてみよう」
 カニ助は、川に入ると、どんどん川の底に向かって歩きました。そして、川の底の主に会いました。

「川の底の主様。おいら、人間になりたいです」
「カニ助よ。カニにはカニの、人間には人間の生き方があるんじゃ。おまえは、カニらしく、カニとして生きなさい」
「おいら、どうしても人間になりたいです」
「そうか。そこまで言うのなら、エビを千匹よこしなさい。そうすれば、お前を人間にしてあげよう」

 さっそくカニ助は、エビを千匹つかまえました。ワカメの袋にぎっしりと詰め込むと、川の底の主の所に持って行きました。
「カニ助、よくやった。約束とおり、人間にしてあげよう」


 カニ助は、川から上がると、人間の男になりました。
「わあ、人間になれた! おや?はさみが小さくなったのかな?」
 カニ助は、手をグッパーしながらまじまじと眺めました。
「ん?なんだか、まっすぐ歩けるぞ」
 カニ助は、きょろきょろしながら、娘の家を探して歩き回りました。

 小道を歩いていると、旅の人に会いました。旅の人は、カニ助に言いました。
「お前さん。どうして裸で歩いているのかね?体を悪くしてしまうよ」
 そう言うと、旅の人は歩いて行ってしまいました。

「そういえばあの娘も、なんだか赤いものを身に付けていたなあ。よし!体に付けるものを探そう」
 カニ助は、きょろきょろしながら、赤いものを探して歩き回りました。
 しばらく歩いていると、一軒の民家がありました。民家のそばに、赤い着物が木にぶら下がっておりました。
「お!あったぞあったぞ、ハハハ」
 カニ助は、手をチョキにして着物を取り、体に付けました。

「んー、なかなかいいな。暖かくて気持ちい〜! 娘はこれだから付けてたんだな。あ〜人間っていいな! あっ、もうじき娘が川に来る頃だ」
 カニ助は、きょろきょろしながら、川に向かいました。


 川に着くと娘がおりました。娘は、カニ助を探しておりました。
「カニ助ちゃん、どこ行ったの。出ておいで!」

 カニ助は、娘の前に出て言いました。
「あのう・・・」
「キャッ! あんた、誰?」
「カニ助です」
「えっ、なんで? あんた、どこの人?」
「えーっと、川のそばに住むものです」
「あなた、男なの?女なの?」
「多分、男だと思います」
「変な人!」
 そう言うと、娘は走って逃げてしまいました。


「はぁ〜、どうしよう。。 娘に嫌われちゃった・・・」
 カニ助は、川辺に座り込むと、ぼうっとしておりました。

「あっ、そうだ! エビを千匹つかまえて、娘にあげてみよう。そうしたら、娘に気に入ってもらえるかも」
 さっそくカニ助は、エビを千匹つかまえました。ワカメの袋にぎっしりと詰め込むと、娘の家に持って行きました。

「あのう、」
 娘が出てきて言いました。
「はい、どなた?あら、昨日の方」
「これ、差し上げます、エヘヘ」
「まあ、エビをこんなにたくさん!あなたは漁師さんなのね。ちょっと待っててね」
 娘は、家に駆け込むと母に言いました。
「母ちゃん。カニ助という女の服を着た変わった漁師さんから、エビを千匹もらったわよ」
「まあ、エビを千匹も! じゃあ、ほれ、いって、家に上がってもらいなさい」


 娘は、カニ助に言いました。
「カニ助さん、どうぞお入りください」
「あはあ、どうも」
 カニ助は、娘の家に上がりました。
「カニ助さん、ここは何にもない所なんですけど、ゆっくり休んで食べて下さいね。あ、それからこの着物、よかったら使って下さい」
 娘は、カニ助に男の着物を渡しました。
「あ、ありがとうございます。頂いてもいいんですか?」
「ええ、どうぞ使って下さい」
「それじゃ、お言葉に甘えて」

 カニ助はすくっと立ち上がると、着物を全部脱ぎました。
「あら、ごめんなさい」
 娘は顔を真っ赤にして、部屋から出て行きました。

 カニ助は、男の着物を着ると言いました。
「あのう、着物ありがとうございます。ぴったりしていて気持ちいいです」
 娘は部屋に戻って来ました。
「あら、カニ助さんお似合いだこと。うふふ」

 カニ助は、娘の笑顔をうっとりと見つめました。カニ助は手をチョキにして、娘の手に置きました。
「きゃ、こそばい! カニ助さん、何のつもりですか?」
 娘はカニ助をにらみました。
「ああ、ごめんなさい。つい、ぼうっとしてしまって。これが癖なんですよ」
「あら、そうなのね。変わった方ね。 あっそうそう、もうすぐ、母ちゃんの鍋の料理が出来ますわ」


 鍋を開けると、エビや野菜がグツグツと煮えておりました。

「じゃあ、これどうぞ」
 娘は、お皿に料理を盛ってカニ助にあげました。
 カニ助は、手をチョキにして料理をつまむと、口の中に入れました。
「いやあ、おいしいですね。アイテッ・・・」

 カニ助は、口の中から料理を取り出しました。その中から、カニの手がにょきっと出てきました。

 カニ助は、口から泡をふいて倒れてしまいました。
「あら、カニ助さん! 大丈夫ですか?」


 気が付くと、カニ助は布団に寝ておりました。

 しばらくすると、娘が部屋に入ってきました。
「カニ助さん、大丈夫ですか? ずいぶんとお疲れになってたんですね。 昨日のエビとカニの鍋は、まだたんと残ってますわよ」
「うわー!」
 カニ助は、飛び起きると、娘の家からどこかに逃げて行きました。

≪完≫

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Last-modified: 2008-02-01 (金) 09:35:59 (4979d)

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