短編恋愛

13歳の初恋

  • 著:funyara9(滝川雅晴)
  • 作成日:2007/08/05
    • 魔法のiらんど 恋愛(純愛) 2007/08/12付 注目作品

本編

 13歳の久美子は、新しい中学校に向かって歩いておりました。
 校門に着くと、鉢巻をした先生が、久美子に話しかけました。

「名前は?」
「佐藤久美子です」
「佐藤久美子さんね。じゃ、あそこの運動場に行って」

 運動場には、大勢の生徒が集まっておりました。

『サワザワ・・・』

 知り合いのいない久美子は、運動場の周りを、とぼとぼと歩いておりました。

「はい、みなさん! 名前を呼ぶので、その先生の所に集まって下さい」

 色の黒い先生が、マイクを持って話しました。

「田中雄一くん、工藤美香さん、佐藤久美子さん・・・」

 久美子は、呼ばれた先生の所に行きました。
 背の高い、男の先生。
 久美子は、先生の腕を見ておりました。

『たくましい腕。つやがいいのね』

 久美子は先生の喉ぼとけを見ておりました。

「佐藤、どうした?」

 先生が久美子に話しかけました。

「はっ、ごめんなさい! 何でもないです」

 久美子は目をそらしました。


 しばらくして、久美子と生徒達は、教室に座っておりました。
 先生が立って、話しをしておりました。

「このクラスの担任の、三浦です。これから1年、みんなの面倒を見るからよろしく!」

 三浦先生の肌は浅黒く、話すと白い歯が見えておりました。

 昼休みになると、久美子は弁当を取り出しました。

「あの、入れてもらってもいい?」

 久美子は、三人の女の子達に言いました。

「いいわよ、一緒に食べよ」

「ねえ。三浦先生って、ちょっとかっこよくない?」
「そうね。すらっと背が高いし、スポーツ得意そうじゃん」
「久美子はどう思う?」
「そうね、素敵な感じよね」
「競争率高いわね。結婚とか、してるのかなあ」
「私がお嫁さんになる!」
「バーカ。出来るわけないじゃん。すごい年の差だし」
「あんた、何歳か知ってるの?」
「知らない」
「アハハ・・・」


 幾日かたった頃、国語の授業がはじまろうとしておりました。

 隣の席の生徒が、久美子に話しかけました。

「佐藤さん」
「はい?」
「悪いけど、教科書、隣で見せてくれない? 忘れちゃってさ」
「あ、いいわよ」
「おれ、松川秀雄ってんだ。よろしく」

 久美子と秀雄は、机を近づけました。

『ん? この匂い・・・』

 久美子は、秀雄の体から出る匂いに、顔をそむけました。

「松川くん、汗臭いわね」
「あ、ごめんごめん。おれ、汗かきだから」

 秀雄はタオルを出して、顔をふきました。


 授業が終わると、久美子は体育館に行きました。

『そーれー、ファイト! ファイト!』

 体育館を覗くと、バレーボールの練習と、バスケットボールの試合をやっているのが見えました。

 バレーボールのコートに、三浦先生がおりました。

「今度は取れよ! ほらっ!」

 三浦先生は、バレーボールを遠くに投げました。

『ダダダッ・・・』

 選手はバレーボールをレシーブしようとして、懸命に走っておりました。

「おい、取れよ! ほらっ!」

 三浦先生は、バレーボールを手前に投げました。

 選手は懸命に走ってきました。

『ダダダッ・・・』

 選手は手を伸ばし、バレーボールのレシーブをしました。

「よし! あと5本! ほらっ!」

『ダダダッ・・・』

 久美子は、先生の姿をじっと見ておりました。

 先生は、久美子をチラッと見つめました。

「よし、OK! 5分休憩!」

 先生は、久美子に近づいて言いました。

「佐藤、どうした? バレーボールやるか?」
「いえ、私はスポーツ苦手なので」
「ハハ。見るのは好きか? マネージャーなんかどうだ?」
「あっ、はい。考えておきます」

 久美子は恥ずかしくなって、走って体育館を出ました。

 運動場を見ると、秀雄の姿が見えました。

『あいつ、野球部なんだ』

 秀雄は白いユニフォームを着て、選手達と一緒に走っておりました。


 次の日、授業が終わると、久美子は体育館に行きました。

 体育館の入り口で、遠くから三浦先生を見ておりました。

「はいトス! ブロック飛べ!」

 しばらくして、久美子は体育館から離れました。

 運動場を見ると、秀雄の姿が見えました。

『あいつ、ピッチャーなんだ』

 秀雄は、大きくふりかぶると、速い球をキャッチャーめがけて投げておりました。

『バシッ』

 キャッチャーミットから、小気味のよい音が鳴り響きました。

『うわっ! キャッチャー、痛そー。あんな球は取れないわ』


 ある日、三浦先生が久美子に話しかけました。

「佐藤。今度の日曜日にバレーボールの試合があるんだが、お前、見にこないか?」
「えっ? は、はい」
「行けるか? じゃ、これ」

 三浦先生は、久美子にチケットを渡しました。

「梅沢駅を降りたとこの市立体育館な。じゃ」

 日曜日になり、久美子は市立体育館で、バレーボールの試合を見ておりました。

『ソーレー!』
『ファィト!』
『レッツゴーゴーゴー、飯田!』
『ワーッ!』

 試合が終わると、三浦先生は久美子に話しかけました。

「佐藤、ちょっと待ってて」

 三浦先生はコートの片付けが終わると、久美子の所に戻って来ました。

「やあ、待たせたね。どうだ、飯でも食わんか?」


 しばらくして、三浦先生と久美子は、ファミレスにおりました。

「三浦先生、今日はいい試合でしたね」
「そうだろ!ハハ。 どう? 見てて楽しかったか?」
「はい。後半に、同点に追いついた時が最高でしたね。 三浦先生、結構タイムを取ってましたよね。あの時、何を言ってたんですか?」
「"負けたら殺すぞ"」
「アハハ」
「ハハ。ああいう時はね、落ち着かせるんだよ。ちょっとしたミスをしないようにね。もっと食うか?」
「いえ、私はおなかいっぱいです」
「ところでさあ。お前、バレーボールのマネージャーをやってみないか?」
「えっ?ええ・・・ あの、マネージャーって、どんな事をするんですか?」
「そうだね。まあ、選手のお手伝いだな。 出欠の確認とか、コートの設置と片付けを一緒にするとか、選手のドリンクの補給とか、試合の点数付けとかかな」
「そうなんですね。 まあ、もうちょっと考えさせて下さい」
「いいよ。佐藤が入ったら紅一点だぞ! お前、もてるぞ〜」
「アハハ」
「よし、そろそろ出るか」
「あの、お金」
「いいよ。おごり」

 ファミレスを出ると、三浦先生は久美子に言いました。

「佐藤、送ってくよ。車で来てるんだ」
「えっ? いいんですか?」

 有料駐車場から、車のスカイラインが出てきました。

「へえ〜、いい車に乗ってるんですね」
「燃費は悪いけどね。さ、乗って」

 有料駐車場を出て、夜の町を走り出しました。

「あの、三浦先生は、奥さんいらっしゃるんですか?」
「うーん、忘れたね」
「アハハ」
「秘密」
「お子さんはいらっしゃるんですか?」
「ああ、百人ほどね」
「アハハ」


 暗い道を走っておりました。
 車が止まりました。

「なあ、佐藤」
「はい」
「お前、おれに気があるか?」

 三浦先生は、久美子の目をじっと見つめました。

「えっ?」

 久美子の手を握りました。

「何をするんですか、キャッ!」

 久美子の手を強く握ると、顔を近づけて来ました。

「イヤ、離して! キャッ!」
『ゴッ』
「痛!」

 久美子は頭突をしました。

『ガチャッ』
「ハア、ハア・・・」

 久美子は車のドアを開けて出ると、走り出しました。

「おい、佐藤! 冗談だってば!」

 久美子は振り返らずに、走って逃げました。

 その日の夜、久美子はふとんの中で、泣いておりました。

『ウウ・・・』


 幾日かたって、久美子は学校に行きました。

「久美子、大丈夫?」
「うん、平気。ありがとう」

 隣の席の秀雄が、久美子に話しかけました。

「佐藤さん。体、大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「なんか、まだつらそうだね。なんか困った事があったら、言ってくれよな」

 秀雄は、にっこりと微笑みました。

 久美子は、秀雄の顔をじっと見つめました。

『この笑い方、ちょっとお父ちゃんに似てるわ』

 次の日、廊下で三浦先生と会いました。

「佐藤、なあ・・・」

 久美子は、目をそらして通り過ぎました。

 席に戻って、秀雄を見つめました。

 腕の傷、日に焼けた真っ黒な体、割れた爪。

「ん?」

 秀雄は久美子を見ました。

「あっ、ごめん。なんでもない」

 久美子の心臓が、早鐘のように鳴っておりました。

『松川くん、意外とかっこいい・・・』

 授業が終わって、久美子は運動場に行きました。

 秀雄の姿が見えました。
 秀雄は、大きくふりかぶると、速い球をキャッチャーめがけて投げておりました。

『バシッ』

 キャッチャーミットから、小気味のよい音が鳴り響いておりました。

『かっこいい・・・』

 秀雄は、久美子の姿に気が付くと、にっこりと笑って手をふりました。
 久美子は、目をそらしました。すぐに振り向くと、秀雄に向かって手をふりました。


 次の日、国語の授業がはじまろうとしておりました。

 久美子は秀雄に言いました。

「松川くん」
「ん?」
「悪いけど、教科書、隣で見せてくれない? 忘れちゃってさ」
「あ、いいよ」

 久美子と秀雄は、机を近づけました。

 久美子は、秀雄の体から出る匂いをかぎました。

『この匂い・・・ 懐かしい、いとおしい感じ・・・』

「また匂ったら、ごめんな」

 秀雄はタオルを出して、顔をふきました。

「ううん、気にならないわ」

 久美子の心臓が、早鐘のように鳴っておりました。

 久美子はハンカチを取り出すと、秀雄と同じように顔をふきました。


 次の日、久美子は早く学校に行きました。
 だれもいない教室で、秀雄の机の中に手紙を入れました。

「おはよう」
「おはよう!」
「おはよー」

 秀雄が教室に入ってきました。

 久美子の心臓が、早鐘のように鳴っておりました。

 久美子は席を立つと、教室から出て行きました。

 秀雄は、机の手紙に気が付いて、中を開けました。

『松川くん 佐藤久美子です。松川くんの事、好きです。よかったら、文通してもらえませんか?』

 秀雄は、顔が真っ赤になりました。
 あわてて手紙をしまうと、カバンの中に入れました。

 久美子はおそるおそる、席に戻りました。

 秀雄は、顔を真っ赤にして、タオルで顔をふいておりました。

 久美子の心臓が、早鐘のように鳴っておりました。

 久美子は上目使いで、秀雄をちらっと見ました。
 秀雄は、それに気づくと、タオルで顔をかくしました。

「おい、松川!」

 国語の先生が秀雄に言いました。

「はいっ!」
「お前、顔が真っ赤だぞ。どうした?」
「はい、日焼けであります!」

「ハハ・・・」
「アハハ・・・」

 教室から笑いがこぼれました。
 久美子は、ドキドキしながら笑いました。


 次の日、秀雄は早く学校に行きました。
 だれもいない教室で、久美子の机の中に手紙を入れました。

「おはよう」
「おはよー」
「おはよう!」

 久美子が教室に入ってきました。

 秀雄の心臓が、早鐘のように鳴っておりました。

 秀雄は席を立つと、教室から出て行きました。

 久美子は、机の手紙に気が付くと、手に取ってトイレに駆け込みました。

『佐藤さん 松川秀雄です。ごめんなさい・・・』

 久美子の手から、手紙が落ちました。
 目から、ポロポロと涙がこぼれました。

「ウウッ・・・」


 久美子は、手紙を拾って続きを読みました。

『佐藤さん 松川秀雄です。ごめんなさい。おれ、文を書くのが苦手です。よかったら付き合ってください』

「ああっ!」

 久美子は、手紙を抱きしめると、うれしそうな顔をして飛び跳ねました。

 久美子は教室に戻りました。

 久美子は、上目使いでにっこりとしながら、秀雄に話しました。

「松川くん」

 秀雄は、真っ赤な顔をして答えました。

「はい!」
「今日、一緒に帰ってもいい?」
「あっ、いいですね。是非」
「じゃあ、野球が終わるの、待ってるね」

 秀雄は、久美子に向かってにっこりとほほえみました。

 久美子は、うれしそうに秀雄を見つめました。

≪完≫

[ 戻る ]

感想等の書き込みをお待ちしております。
下記の掲示板で自由に書き込みが出来ます。





トップ 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS


姉妹サイト:
検索エンジン・ポータルサイトのリンク集 夢事典・夢診断Wikidream PS3体験版情報 名作シネマ☆セリフ
格安ファーストフード情報 お勧めJ-POP☆邦楽
気になるIT用語辞典 気になる経理用語辞典 気になる現在・時事用語
Last-modified: 2010-03-30 (火) 16:17:14 (3154d)

WEB・携帯(モバイル)サイト開発とSEO対策の和道株式会社